「女性向けがん保険って、普通のがん保険とどう違うの?」
「女性向けがん保険に入る必要って本当にあるの?」
がん保険への加入を検討している方であれば、女性向けがん保険について聞いたことがあるかもしれません。
しかし、普通のがん保険とどう違うのか、高い保険料を払ってわざわざ入る必要があるのか、疑問に感じている方もいるでしょう。
この記事では、女性向けがん保険の仕組みや必要性、選ぶ際の注意点などについて簡単に解説します。
がん保険は商品が多く、どれを選んでいいか悩みやすい保険の一つです。この記事を参考に、ぜひ自分に最適な保険を選んでください。
大学卒業後、外資系生命保険会社に入社。2019年に独立しコンサルティング会社設立。生命保険会社時代は保険代理店営業に従事し、販売手法、新規市場開拓で実績を積む。独立後は様々な企業のコンサルティングを行いつつ、保険募集人としても活躍。
「すべての人が保険の悩みや将来の不安から解放され、人生を活き活きと生きられるよう、そのお手伝いをする」
この言葉をミッションに、保険とみらい編集部は、難しい保険の情報を、どこよりも「わかりやすく」「新しく正確で」「網羅的に」お届けします。
女性向けがん保険の仕組み・保障内容・注意点をまとめて解説
30代から50代の女性は、女性向けがん保険に加入するのがおすすめです。
女性向けがん保険とは、女性が罹患しやすいがんへの保障を厚くした保険です。乳がんや子宮頸がんなど、女性特有のがんに対する給付金額が、通常のがん保険よりも高いのが特徴です。
なぜ、女性特有のがんの保障を厚くする必要があるのでしょうか?
実は、女性のがん罹患数は、30代から50代にかけて急激に増える傾向があります。若年層でがんに罹患するリスクは、女性の方が男性よりも高いのです。
そのため、30代から50代にかけての女性ががんのリスクに備えるには、普通のがん保険よりも、女性特有のがんへの保障が厚い女性向けがん保険に加入するのが最適です。
まずは、女性向けがん保険の仕組みや保障内容、必要性、注意点などについて解説していきます。
女性向けがん保険の種類
女性向けがん保険には、次の2つのタイプがあります。
- 主契約として女性特有のがんを保障するタイプ
- 特約として女性特有のがんを保障するタイプ
主契約タイプの女性向けがん保険は、女性向けを売りにしている独立した保険商品です。
一方、特約タイプの女性向けがん保険は、通常の医療保険やがん保険に特約として女性に対するがんの保障を付加するものです。契約時に主契約と一緒に付帯するのが通常ですが、後から追加できる商品もあります。
どちらのタイプであっても、乳がんなど女性特有のがんにかかった際の給付金が上乗せされます。
通常のがん保険との違い
女性向けがん保険は、通常のがん保険と比べて、次のような違いがあります。
- 女性が罹患しやすいがんへの保障が厚い
- 乳房再建治療や外見ケアのための給付金が支払われる商品がある
- 保険料が割高
女性向けがん保険には、女性特有のがんにかかった時の給付金が多いという特長があります。
がん治療では、乳房の切除や脱毛など、治療の過程で外見が変わる場合があります。こうした外見の変化をカバーするため、女性向けがん保険の中には、乳房の再建手術やウィッグ代などに使える、特別な給付金が支払われる商品があるのです。
ただし、こういった手厚い保障がある分、保険料は通常のがん保険よりも割高になっています。
女性向けがん保険の保障内容
女性向けがん保険の保障内容は、主に次の4つです。
- がん診断給付金
- がん入院給付金
- がん手術給付金
- がん通院給付金
がん診断給付金
がん診断給付金は、がんと診断されたときに支払われる給付金です。「がんと診断されたら100万円」といった形で、一度にまとまったお金が支払われるのが特徴です。
女性向けがん保険では、乳がんや子宮頸がんなど、女性特有のがんと診断されたら、診断給付金が上乗せされます。
ただし、保険商品によって支払いルールが異なります。上皮内新生物は不可の商品や、がんが転移した際には支払われない商品などがあり、注意が必要です。
保険を選ぶ際には、どういったケースでがん診断給付金が支払われるのか、確認することが大切です。
がん入院給付金
がん入院給付金は、がんを治療するための入院に対して支払われる給付金です。「1日につき1万円」といった形で、入院した日数に応じた額が支払われます。
女性向けに限らず、がん保険の場合、給付金を受け取れる日数に制限のないものが多いです。がんの完治までに長い期間がかかっても、安心して入院治療に専念できます。
がん手術給付金
がん手術給付金は、がんを治療するための手術に対して支払われる給付金です。「がん入院給付金の20倍」といった形で、入院給付金を基準に給付金額を設定するケースが多いです。
1回の手術ごとに受け取れますが、保険商品によっては、給付回数に制限がある場合もあります。契約時にしっかりと確認しておきましょう。
がん通院給付金
がん通院給付金は、がんを治療するための通院に対して支払われる給付金です。「通院1回につき5,000円」といった形で、通院した日数に応じた額が支払われます。
がん通院給付金は、保険商品によっては、支払われない場合もあります。現代のがん治療では、通院しながら治すというケースも増えているので、がん通院給付金の有無は保険選びの重要な判断基準となります。
その他の給付金
保険商品によっては、がん先進医療給付金や外見ケア給付金などの特約がつけられるものもあります。
がん先進医療給付金は、先進医療を受けたときに給付金が支払われる特約です。外見ケア給付金は、がん治療によって外見に変化が生じた場合、給付金が支払われます。
女性向けがん保険には、上に挙げた例以外にも、さまざまな特約をつけられる商品があります。自分にとって必要な保障は何なのか、よく吟味した上で、必要な給付金を受け取れる保険を選びましょう。
女性向けがん保険はなぜ必要?
がんは性別に関係なく、女性でも男性でも等しく罹患する可能性があるものです。どうして「女性向けがん保険」という商品があるのでしょうか?
実は、女性は男性よりもがんに罹患するリスクが若い年齢の場合に高い傾向にあるのです。特に30代から50代にかけては、男性よりも女性の罹患率が高いというデータがあります。
ここでは、女性向けがん保険が必要な理由について、最新のデータを踏まえて解説します。
女性のがんの罹患数は30代~50代で急増する
女性向けがん保険が必要な理由として、女性のがん罹患数が男性に比べて多いことが挙げられます。
次の画像は、2019年のがん罹患数を男女別・年齢別に折れ線グラフで表したものです。
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)、全国・2019年・2‐A 「年齢階級別罹患数:部位別、性別」をもとに作成
上のグラフから読み取れるのは、以下の2点です。
- 女性のがん罹患数は30代から50代にかけて急増する
- 30代から50代にかけては男性よりも女性の方が罹患数が多い
女性の場合、若い頃のがん罹患リスクが高いのが特徴です。そのため、30代に入る頃には、がんにかかるリスクに備えておく必要があります。
また、30代から50代にかけては、女性のがん罹患数が男性よりも大幅に上回っています。
女性向けがん保険は、がんに罹患するリスクに若いうちから備えたい、という女性のニーズに応えた商品なのです。
女性の罹患数が多いがん
女性ががんに罹患しやすい部位と罹患数について、2019年のデータをまとめると、以下の表の通りです。
がん罹患部位 | がん罹患人数(女性) |
---|---|
乳房 | 97,142 |
大腸 | 67,753 |
肺 | 42,221 |
胃 | 38,994 |
子宮 | 29,136 |
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)、全国・2019年・2‐A 「年齢階級別罹患数:部位別、性別」をもとに作成
女性のがんで特徴的なのは、乳がんの罹患数が突出していることです。また、子宮がん(子宮頸がん、子宮体がん)も女性特有のがんであり、罹患数が多くなっています。
女性の死亡者数が多いがん
女性のがんによる死亡者数について、2022年のデータを部位別にまとめると、以下の表の通りです。
がん罹患部位 | がん死亡者数(女性) |
---|---|
大腸 | 24,989 |
肺 | 22,913 |
膵臓 | 19,860 |
結腸 | 19,021 |
乳房 | 15,912 |
※出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)をもとに作成
全年齢で見るとこのような結果になりますが、30代から50代の女性に限ると、乳がんでの死亡者数が他の部位に比べて圧倒的に多くなっています。加えて子宮がん(子宮頸がん、子宮体がん)や卵巣がんによる死亡者数も、30代から50代にかけて多いのが特徴です。
がん罹患部位 | がん死亡者数(30‐50代女性) |
---|---|
乳房 | 3,572 |
子宮 | 1,901 |
大腸 | 1,706 |
卵巣 | 1,365 |
結腸 | 1,150 |
※出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)をもとに作成
女性が罹患しやすいがんの特徴
女性が罹患しやすいがんとして、以下の3つが挙げられます。
- 乳がん
- 子宮がん(子宮頸がん、子宮体がん)
- 卵巣がん
ここでは、それぞれのがんの特徴について、簡単に解説していきます。
乳がんの特徴
乳がんは、30代から50代の女性が罹患するリスクの高いがんです。
乳がんの原因は、性ホルモンのエストロゲンが関係しているとされています。また、喫煙習慣や肥満など、生活習慣の乱れによっても罹患リスクが高まります。
2019年のデータを参考に、30代から50代の女性で乳がんに罹患した人数をまとめると、次の表の通りです。
年齢 | 乳がん罹患人数(女性) |
---|---|
30-34歳 | 933 |
35-39歳 | 2,455 |
40-44歳 | 6,406 |
45-49歳 | 11,287 |
50-54歳 | 9,571 |
55-59歳 | 8,777 |
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)、全国・2019年・2‐A 「年齢階級別罹患数:部位別、性別」をもとに作成
30代に入ってから乳がんの罹患数は大幅に増え、40代後半にピークを迎えます。50代に入っても乳がんの罹患数は高い数値を維持しています。
罹患数が多い一方で、乳がんは早期発見によって生存率が9割以上まで高まるといわれています。そのため、定期的な健康診断を怠らず、しこりなどの違和感を感じたら早めに医師の診察を受けることが大切です。
子宮がん(子宮頸がん、子宮体がん)の特徴
子宮がんもまた、30代から50代にかけて罹患数が大きく増えるがんの1つです。
子宮がんは、子宮頸がんと子宮体がんに分けられます。
子宮頸がんは、子宮の入り口である子宮頸部にできるがんです。性交渉を通じて感染する、ヒトパピローマウイルスが原因の1つとされており、比較的若い世代でも罹患率が高いのが特徴です。
年齢 | 子宮頸がん罹患人数(女性) |
---|---|
30-34歳 | 534 |
35-39歳 | 995 |
40-44歳 | 1,195 |
45-49歳 | 1,347 |
50-54歳 | 1,108 |
55-59歳 | 926 |
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)、全国・2019年・2‐A 「年齢階級別罹患数:部位別、性別」をもとに作成
子宮体がんは、子宮の内部にできるがんです。子宮内膜の病変により発生するため、月経によって周期的に排出されるうちは罹患リスクが低いとされています。一方で、更年期による月経不順が起こり始める40代後半から50代にかけて罹患数が増加します。
年齢 | 子宮体がん罹患人数(女性) |
---|---|
30-34歳 | 191 |
35-39歳 | 457 |
40-44歳 | 896 |
45-49歳 | 1,831 |
50-54歳 | 2,652 |
55-59歳 | 2,726 |
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)、全国・2019年・2‐A 「年齢階級別罹患数:部位別、性別」をもとに作成
卵巣がんの特徴
卵巣がんは、初期の自覚症状がなく、早期発見が難しいがんといわれています。
卵巣がんは、排卵時に細胞上にできる傷が原因の1つです。そのため、排卵回数の多い人や、閉経が遅い人、妊娠・出産経験のない人などが罹患しやすいとされています。
卵巣がんは、閉経後に発症する傾向があります。罹患数は、40代後半から50代にかけて大きく増加していることがわかります。
年齢 | 子宮体がん罹患人数(女性) |
---|---|
30-34歳 | 335 |
35-39歳 | 488 |
40-44歳 | 838 |
45-49歳 | 1,422 |
50-54歳 | 1,599 |
55-59歳 | 1,372 |
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)、全国・2019年・2‐A 「年齢階級別罹患数:部位別、性別」をもとに作成
女性向けがん保険の注意点
女性のがん治療にかかる費用をまかなえる女性向けがん保険ですが、加入する前に注意しておきたい点があります。それは、以下の4点です。
- がんに罹患してからだと入れない
- 公的医療制度と合わせて考える
- 通常のがん保険で十分な場合がある
- 保障内容にばらつきがある
がんに罹患してからだと入れない
女性向けに限らず、がん保険には免責期間というものが設けられています。
免責期間とは、がんにかかっても保険金が支払われない期間のことです。
一般的ながん保険では、通常、契約から90日間は、がんにかかっても保障が受けられません。つまり、がんを発見してから保険を探しても遅いのです。
こういった理由から、女性向けがん保険は、早いうちに加入した方が安心だといわれています。
公的医療制度と合わせて考える
女性向けがん保険は、基本的に公的医療制度ではまかなえない費用をまかなうためのものです。
公的医療制度が保障していない費用とは、以下のようなものです。
上記の費用は、すべて自分で負担しなくてはなりません。
一方、上記以外の治療費には、公的医療保険が適用され、3割負担となります。また、のちに詳しく述べますが、一カ月の支払い金額が多い場合は、高額療養費制度によって限度額を超えた金額が返ってきます。
女性向けがん保険を選ぶ際は、公的医療制度でどれだけの治療費をまかなえるか調べることが大切です。その上で、足りない金額を保障してくれるがん保険を選びましょう。
通常のがん保険で十分な場合がある
女性向けがん保険にわざわざ入らなくても、通常のがん保険でまかなえる可能性があります。
自分に必要な保険金額が分かっていれば、女性向けがん保険を選ぶべきか、通常のがん保険で十分か、判断がつきます。
女性向けがん保険は、通常のがん保険よりも保険料が割高です。通常のがん保険でも保障が十分と感じるなら、通常のがん保険を契約するという選択肢も検討しましょう。
保障内容にばらつきがある
女性向けがん保険にはさまざまな種類があり、保障内容も商品によって違います。
「女性向け」という名前だけで保険を選ぶと、本当に必要な保障を受けられない可能性があります。
女性向けがん保険を選ぶ際は、必ず保障内容を確認したうえで、必要な保険を選びましょう。
実際にかかる費用は?女性向けのがん保険に入る現実的なメリット
がん治療には、多額のお金が必要だというイメージを持っている方は多いでしょう。しかし、実際のところいくらかかるのでしょうか?
がん治療にかかる実際の費用を算出すれば、女性向けがん保険に入るメリットが明確になります。治療費の不安から解放され、余裕をもってがんに備えられるでしょう。
ここでは、がん治療にかかる実際の費用を計算したうえで、女性向けがん保険に入るメリットについて解説します。
がんの治療にかかる費用
がんの治療にかかる費用は、大きく以下の2種類に分けられます。
このうち、がんそのものの治療にかかる費用も、さらに以下の2種類に分けられます。
通常のがん治療には、公的医療保険が適用されます。ただし、先進医療や自由診療にあたる治療には、適用されません。
その他の費用としては、以下が挙げられます。
その他の費用の額には個人差があります。入院しながらがんを治す場合は食事代が多くかかりますし、通院で治す場合は交通費が高くなります。また、差額ベッド代やがん以外の病気の治療費も、必要な人とそうでない人がいるでしょう。
がんそのものの治療にかかる費用と、その他の費用を合わせたものが、がんの治療にかかる費用となります。
がんの治療費の計算
ここでは、がんの治療にかかる費用を、実際に計算してみましょう。
がんそのものの治療にかかる費用
まずは、がんそのものの治療にかかる費用についてみていきましょう。
ここでは、女性が罹患しやすい乳がんと子宮がんの治療にかかる費用について取り上げます。
以下の表は、乳がんおよび子宮がんの治療にかかる費用を、入院/通院別にまとめたものです。
入院費用 | 通院費用 | |
---|---|---|
乳がん | 586,010 | 57,630 |
子宮がん | 641,080 | 30,390 |
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)、医療給付実態調査 統計表 第3表 疾病分類別、診療種類別、制度別、件数、日数(回数)、点数(金額)をもとに作成
表の金額は、公的医療保険が適用される治療にかかる費用です。実際に払う金額は、この額の3割となります。
例えば、乳がんを通院で治す場合だと、【586,010円×0.3=175,803円】が実際に払う金額となります。
高額療養費制度について
高額療養費制度では、1カ月間に医療機関へ支払う金額の上限が決められています。それを超える金額は、申請することによって戻ってきます。
1カ月に支払う金額の上限は、年収によって変わります。ここでは、年収500万円の場合を想定しましょう。乳がんを入院しながら治す場合、医療費の上限はいくらになるでしょうか?
年収500万円の場合、1カ月に支払う医療費の上限は、【80,100円+(医療費-267,000円)×1%】という計算式で求められます。
医療費を平均額である586,010円として計算すると、【80,100円+(586,010円-267,000円)×1%≒83,290円(端数切り捨て)】となります。
したがって、戻ってくる金額は、【175,803円-83,290円=92,513円】です。
高額療養費制度を利用することで、高額ながん治療費を抑えることができます。
先進医療は10割負担!
「公的医療制度があれば女性向けがん保険は必要ないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、がん治療では、先進医療による治療を受ける可能性があります。
これらは公的医療保険では保障されないため、金銭的な負担が非常に大きくなるのです。
がん治療にかかわる主な先進医療と、その治療費についてまとめると、以下の通りです。
先進医療の種類 | 費用 |
---|---|
陽子線治療 | 265万円 |
重粒子線治療 | 319万円 |
※出典:厚生労働省「【先進医療A】令和3年6月30日時点における先進医療に係る費用」をもとに作成
公的医療保険が適用されない先進医療では、治療費が高額になることがわかります。
女性向けがん保険は、こういった先進医療を受ける際の備えとなるものです。
その他の費用
その他の費用で大きいのは、入院に伴う食事・生活療養費です。ここでは、食事・生活療養費を取り上げて、費用がどれくらいの金額になるか見てみましょう。
乳がんと子宮がんでの入院に伴う食事・生活療養費の平均は、以下の表の通りです。
がんの種類 | 食事・生活療養費 |
---|---|
乳がん | 150,200 |
子宮がん | 158,040 |
※出典:医療給付実態調査 統計表 第3表 疾病分類別、診療種類別、制度別、件数、日数(回数)、点数(金額)をもとに作成
乳がんも子宮がんも、入院生活中の食事・生活療養費の平均は15万円超となっており、決して安くはない金額です。
食事・生活療養費以外にも、必要な人には差額ベッド代、通院治療の場合は交通費など、その他の費用は意外と多くかかります。
こういった治療外の費用に対する備えとしても、女性向けがん保険が活躍します。
がん治療にかかる女性特有の費用
女性のがん治療は、男性よりも多くの費用がかかる可能性があります。
がん治療にかかる女性特有の費用としては、以下のようなものがあります。
がん治療では、抗がん剤の副作用により頭髪が抜け落ちる可能性があります。脱毛に対応するための医療用ウィッグ代は、基本的に自己負担となります。
また、乳がんによって切除した乳房の再建手術は、保険が適用されるものの、がんそのものを治療するのとは別にかかる費用です。
加えて、がんに罹患した人は、うつ病や適応障害、せん妄を併発する可能性が高いとされています。特に女性の場合、妊娠や出産にまつわる不安があるため、男性よりも心の病にかかりやすい傾向にあります。その治療のために、カウンセリングなどの自由診療を受ける可能性があるのです。
女性向けがん保険は、こういったがん治療にかかる女性特有の費用に備えるためにも、必要な保険なのです。
女性向けがん保険に入るメリット
がん治療にかかる費用がどれくらいになるのか、大体の目安をお伝えしてきました。
ここでは、女性向けがん保険に入るメリットについて、あらためて解説します。
がん治療にかかる費用の大部分をまかなえる
第一に、女性向けがん保険に入ることで、治療費はもちろん、その他の費用にも備えることができます。
保険が適用される治療は、基本的に3割負担で、高額療養費制度も利用できます。しかし、それでも限度額までは治療費を払わなくてはなりません。
加えて、食事代や交通費など、がんそのものの治療費以外にかかるお金はたくさんあります。
これらがん治療にかかるさまざまな費用に対しては、女性向けがん保険に入っておくことが最適な備えとなります。
先進医療に備えられる
先進医療など、公的医療保険が適用されない治療を受けなくてはならない場合も、女性向けがん保険が活躍します。
もちろん、がんは先進医療を受けなくては絶対に治らない、というものではありません。公的医療保険が適用される治療だけでも、がんを治すことは可能です。
ですが、症状によっては先進医療が効果的な場合もあります。ですので、経済的な余裕があれば、もしもの場合に備えておくことが大切です。
女性向けがん保険の中には、はじめから先進医療も保障しているものや、主契約に先進医療特約をつけられるものがあります。特約は、月々数百円の保険料上乗せでつけられるものもあるため、経済的な余裕がある方は検討するとよいでしょう。
不安を軽減できる
女性向けがん保険に入るもっとも大きなメリットは、不安を軽減できることです。
がんの治療自体が不安なのに、お金の心配までしなくてはならなくなると、治療に専念する心の余裕がなくなってしまいます。うつ病や適応障害など心の病も併発してしまうかもしれません。
女性向けがん保険に入っておけば、経済的な不安を大幅に軽減し、落ち着いて治療に専念できるでしょう。そのためには、がん治療にかかる費用がいくらなのか調べ、必要な保険に入っておくことが大切です。
女性向けがん保険の種類
女性向けがん保険は、保障期間の違いによって以下の2種類に大別されます。
- 終身保険
- 定期保険
この2種類に加えて、特約を使って女性特有のがんへの保障を厚くするという選択肢もあります。
ここでは、女性向けがん保険の種類と特徴について簡単に解説します。
終身がん保険
終身がん保険は、保障が一生涯続くがん保険です。がんにかかった際にがん診断給付金やがん入院給付金が受け取れます。
保険料の支払いは、生涯支払い続ける終身払いと、一定期間内に全額支払う短期払いがあります。高齢者となる前に短期払いしておくことで、老後の金銭的負担を減らすことが可能です。
終身がん保険のメリットは、生涯にわたってがんに備えられるという点です。解約しない限り、がんのリスクが高まる高齢者になっても保障を受けられます。
一方、終身がん保険のデメリットは、保険料が割高だという点です。また、解約すると保険料が無駄になってしまうので、医療の進歩に対応した新しい保険商品へ乗り換えにくいというデメリットもあります。
ただ、終身がん保険の保険料は、若いころに契約すれば安くなり、その金額は生涯変わりません。そのため、できるだけ早いうちに契約すると、安い保険料で生涯がんに備えることができます。
定期がん保険
定期がん保険は、保障期間が決まっているがん保険のことで、いわゆる掛け捨ての保険です。
保障内容については、基本的に終身がん保険と変わりはありません。保険期間内にがんにかかった場合、がん診断給付金やがん入院給付金が受け取れます。また、保険料も若いころに加入すると安くなります。
定期がん保険のメリットは、終身がん保険よりも保険料が安いということです。保険料を払う余裕があまりない人は、定期がん保険で万一に備えておくのがよいでしょう。
一方、定期がん保険のデメリットは、更新が必要だという点です。10年や20年などの保障期間が過ぎると、保険に入りなおさなくてはならず、しかも保険料は再計算されて高くなります。
また、定期がん保険では70歳や80歳など、一定の年齢に達すると入れなくなるのが一般的です。一生涯定期がん保険で備えるということはできません。
そのため、定期がん保険は、保険料を支払う余裕があまりないときの、一時的な備えと考えるのがよいでしょう。
女性疾病特約
女性疾病特約は、通常の医療保険やがん保険の特約として入るものです。乳がんや子宮がん、帝王切開など女性特有の病気や手術に対する保障を厚くします。
女性疾病特約のメリットは、主契約の給付金に上乗せした金額が受け取れるという点です。主契約に付加する形なので、新たに契約を結ぶ手間も必要ありません。
一方、デメリットは主契約を解約したら特約も解約されてしまうという点です。また、保険料も特約分だけ高くなります。
わざわざ女性向けがん保険を契約したくない、たくさんの保険に入りたくない、という方は、特約でがんに備えるという選択肢を検討しましょう。
いつ入るべき?女性向けがん保険のおすすめの選び方【30代・40代・50代】
いつ罹患するかわからないがんに備えるために、女性向けがん保険には早いうちから入っておくことが大切です。
しかし、保険商品は種類が非常に多く、どのがん保険に入ればよいのか迷ってしまいがちです。選ぶのが面倒で、加入を先延ばしにしてしまうこともあるでしょう。
自分に合った保険を選ぶには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。がん保険はがんになる前に入る必要があるので、保険選びのコツをつかんで、なるべく早く加入するようにしましょう。
ここでは、女性向けがん保険に入るべきタイミングや、選び方のポイントについて解説します。
女性向けがん保険はいつ入るべき?
女性向けがん保険には、どのタイミングで入るべきでしょうか?
すでにお伝えしてきた通り、女性が罹患しやすい乳がんや子宮がんは、30代から罹患数がぐんと増えます。そのため、30代に入る以前に加入するのがベストといえます。
下の図は、女性のがん保険加入率に関するデータです。
年代 | 加入率 |
---|---|
20代 | 25.4% |
30代 | 46.4% |
40代 | 50.8% |
50代 | 44.7% |
60代 | 40.3% |
※出典:公益財団補陣生命保険文化センター『令和元年度「生活保障に関する調査」をもとに作成)
がんのリスクが高まる30代に入るころから、がん保険への加入率はぐんと増えているのがわかります。
一方で、60代の加入率は低くなっています。これは、60代で新たにがん保険に加入すると、保険料が高額になってしまうからだと考えられます。
保険料を抑えるという意味でも、がん保険は30代に入るまでに入っておくのが理想的です。
がん保険は入るタイミングによって異なる商品を
女性向けがん保険は、入るタイミングによって最適な商品が異なります。
30代の場合、結婚や出産などのライフイベントが控えていることが多く、近い将来何かとお金がかかると予想されます。そのため、がん保険にまでお金を回すことができないかもしれません。
お金に余裕がない、もしくはお金を貯めておきたい場合は、保険料の安い定期がん保険に入るのがおすすめです。ただし、定期がん保険だけでは一生涯の保障は受けられないので、いずれは終身がん保険へ乗り換えることも検討するのがよいでしょう。
40代から50代にかけては、結婚し、家族ができている方も多いでしょう。家族がいる場合は、生命保険の特約として女性向けがん保険に加入するという選択肢もあります。
特に、子供ができた後は、死亡保障の厚い生命保険に加入しながら、特約でがんに備えることで、保険をすっきりさせることができるでしょう。
ただし、主契約が一生涯を保障していても、特約部分は80歳までしか保障されない、といった商品もありますので、契約内容をよく確認してから判断しましょう。
なお、お金に余裕があったり、特約として入るのが不安だったりする場合は、終身がん保険に入ることを検討してもよいでしょう。
大切なのは、自分が必要とする保障をはっきりさせたうえで、現在の経済状況で無理なく保険料を払えるがん保険を選ぶことです。
女性向けがん保険の選び方
女性向けがん保険を選ぶ際、基準となるポイントがいくつかあります。ポイントを押さえることで、自分に必要な保障を受けられる、最適な保険を見つけることができるでしょう。
ここでは、女性向けがん保険の選び方について解説します。
公的医療制度では足りない金額が補えること
すでに何度かお伝えしてきましたが、女性向けがん保険は、公的医療保険では足りない金額をまかなうためのものです。
足りない金額を算出するには、おおよその治療費を実際に計算してみることが大切です。がんそのものの治療にかかる費用はいくらか、その他の費用はいくらか、おおまかで構いませんので計算して、不足しそうな金額を算出しましょう。
また、貯金がある程度確保できている場合は、貯金でまかなうことを検討するのも大切です。その場合、女性向けがん保険は、貯金だけでは足りなくなる可能性のある、先進医療への保障の厚いものを選ぶとよいでしょう。
がん治療でどれだけのお金が必要なのか、大体の目安をつけたうえで保険を選びましょう。
上皮内新生物に対応したがん保険を選ぶこと
女性のがんの特徴として、上皮内新生物が多いという点が挙げられます。
上皮内新生物とは、臓器の表面にできたがんのことです。臓器の深い部分にまで到達していないため、転移のリスクが少なく、手術で取り除きやすいのが特徴です。しかし、いずれ臓器の深い部分にまで浸潤し、悪性のがんに変わる可能性もあります。
女性向けがん保険の中には、治療が比較的簡単な上皮内新生物は、保障の対象になっていないものがあります。
しかし、放っておいたら悪性のがんに変わるリスクもあるのが、上皮内新生物です。手術で確実に治療するために、上皮内新生物への保障にも対応しているがん保険を選ぶのが安心です。
通院治療にも給付金が出ること
女性向けがん保険の中には、がん通院給付金のないものがあります。これは、かつてのがん治療では、入院することが当たり前だったからです。
しかし、現代のがん治療では、通院して治すことも一般的になりつつあります。働きながらがんを治すことも可能なのです。
実際にがんにかかったとき、入院以外の選択肢がないと、最悪の場合仕事を辞めざるをえなくなる可能性があります。働きながら治療するという選択肢を持っておくためにも、通院給付金のある保険を選びましょう。
先進医療や自由診療に対応していること
女性向けがん保険は、先進医療も保障してくれるものがおすすめです。
がん治療は、確かに公的医療保険が適用される治療のみでも治せる可能性はあります。しかし、症状によっては先進医療に頼らざるを得ないかもしれません。そうなると、基本的な給付金だけではまかないきれない可能性があります。
また、近年のがん治療は、先進医療だけではなく、自由診療を利用する場合があります。自由診療は、厚生労働省の承認を受けていない治療法のことで、先進医療と同じく、10割負担となるものです。
万が一、先進医療や自由診療を利用する場合に備えて、それらに対応しているがん保険や特約がつけられるがん保険に加入しておくのがよいでしょう。
まとめ
女性向けがん保険は、女性特有のがんに対する保障を厚くしたがん保険です。一般のがん保険よりも保険料が割高ですが、その分がん診断給付金やがん入院給付金が上乗せされます。
女性向けがん保険は、基本的に公的医療保険では足りない金額をまかなうために加入するものです。そのため、がんの治療にどれだけの費用がかかるのかを明確にしたうえで、必要な保障を受けられる保険を選ぶことが大切です。
女性のがん罹患数は、30代から急激に増え始めます。がん保険は、がんにかかってからでは加入できないうえ、年齢を重ねるごとに保険料が高くなるため、若いうちに入っておくとよいでしょう。
ただし、女性向けがん保険は、入っておけば絶対に安心だ、というものではありません。また、保険料が高ければよい保険だというわけでもありません。
自分にとって必要な保障は何か、よく考えたうえで、最適ながん保険を選ぶよう検討してみてください。
大学卒業後、外資系生命保険会社に入社。2019年に独立しコンサルティング会社設立。生命保険会社時代は保険代理店営業に従事し、販売手法、新規市場開拓で実績を積む。独立後は様々な企業のコンサルティングを行いつつ、保険募集人としても活躍。
「すべての人が保険の悩みや将来の不安から解放され、人生を活き活きと生きられるよう、そのお手伝いをする」
この言葉をミッションに、保険とみらい編集部は、難しい保険の情報を、どこよりも「わかりやすく」「新しく正確で」「網羅的に」お届けします。