がん保険と医療保険は、比較されることの多い保険です。保険について調べている中で、「医療保険の中にがんの保障が含まれているけど、がん保険とはどう違うの?」という疑問を持った方は多いのではないでしょうか?
このページでは、2つの保険の違いや、商品選びのポイントなどをわかりやすく解説します。
大学卒業後、大手損害保険会社勤務を経て独立。保険会社時代は代理店営業、新入総合職員の研修担当に従事する。独立後は、FPとして生命保険をはじめとした保障の見直しや、中小企業経営者への事業承継・相続対策などの提案業務を行う。地方ローカル局にて、お金にまつわる話題を取り扱うラジオ番組「おしえて野口さん!」を23年継続放送中。
大学卒業後、大手地方銀行に就職。融資業務に加え、投資信託・保険商品等の資産管理業務を担当。退職後はライターとして独立。複数の大手WEBメディアにて執筆実績あり。
がん保険と医療保険は保障の「対象」が違う
がん保険と医療保険の大きな違いは、保障の対象です。「がん保険」はがん保障に特化した保険、「医療保険」は病気やケガを幅広く保障する保険です。
上のイメージ図のように、保障の範囲は医療保険>三大疾病保険>がん保険、の順に小さくなっていきます。三大疾病保険の保障範囲については、こちらの記事をご覧ください。
がん保険と医療保険の「保障内容」の違い
がん保険と医療保険は、保障内容が重なる部分があります。それぞれの保障内容を比べて、2つの保険の違いを理解しましょう。
がん保険 | 医療保険 | |
---|---|---|
保障対象 | がん | がんを含む病気やケガ |
手術給付金 | ○ | ○ |
入院給付金 | ○ | ○ |
通院給付金 | ○ | × |
診断一時金 | ○ | × |
入院給付金の支払限度日数 | 多くの場合、無制限 | 1回の入院につき60日や120日などの限度あり ※がんによる入院は無制限、もしくは特約で無制限にできる商品もある |
免責期間 | ※保障されない期間 一般的に契約から90日 |
なし |
特約 | 抗がん剤治療特約 放射線治療特約 がん先進医療特約 がん保険料払込免除特約 など |
通院保障特約 先進医療特約 三大疾病一時金特約 入院時一時金特約 女性疾病特約 三大疾病支払日数限度無制限特約 特定疾病保険料払込免除特約 など 【がんに特化した特約】 がん診断(一時金)特約 抗がん剤治療特約 など |
※上記は、一般的な保障内容をまとめたものです。実際の保障内容は商品によって異なります。
がん保険は、保障対象が「がん」に限定される分、がんになったときの保障が充実しているのがわかります。入院・通院それぞれに対する保障や、治療の長期化にも対応できる内容となっています。
一方、医療保険は、がんに限らず幅広い病気やケガへの保障が受けられます。医療保険でがん保障を手厚くしたい場合には、がんに特化した「特約」をオプションとして付加する方法があります。ただし特約の場合、保険の見直しなどで主契約を解約すると特約も消滅してしまう点、また、商品によって希望の特約が用意されていない場合もある点に注意しましょう。
がん保険の「保障内容」を詳しく解説
がん保険で受けられる主な保障内容を、例とともに紹介します。
保障の種類 | 保障内容・給付金の具体例 |
---|---|
がん診断一時金 | がんと診断されたら100万円など |
がん入院給付金 | がんによる入院1日につき10,000円など |
がん通院給付金 | がんによる通院1日につき5,000円など |
がん手術給付金 | がんによる所定の手術1回につき10万円など |
抗がん剤治療特約 | 抗がん剤治療を受けた月ごとに20万円など |
放射線治療特約 | 放射線治療を受けた月ごとに10万円など |
がん先進医療特約 | がんによる先進医療の治療にかかった技術料と同額が給付されるなど(通算2,000万円などの限度あり) |
がん保険料免除特約 | がんと診断されたら以後の保険料の払込が免除される |
この中でも特に注目したいのはがん診断一時金です。がん診断一時金の最大のメリットは、「使い道が自由」ということです。治療費はもちろん、生活費や居住費などあらゆる費用に充てられるのは大きな魅力です。
また、年々増加している通院でのがん治療には、「通院給付金」や「治療給付金(抗がん剤治療特約・放射線治療特約)」で備えたり、さらに「先進医療特約」を付加することで、治療の選択肢が広げたりと、がん保障は医療保険よりも細かいニーズに応えられるよう作られています。
医療保険の「保障内容」を詳しく解説
次に、医療保険で受けられる主な保障内容を、例とともに紹介します。
保障の種類 | 保障内容・給付金の具体例 |
---|---|
入院給付金 | 病気やケガによる入院1日につき5,000円など |
手術給付金 | 病気やケガによる手術1回につき10万円など※1 |
通院特約 | 病気やケガなどによる通院1日につき5,000円など |
先進医療特約 | 先進医療の治療にかかった技術料と同額が給付されるなど(通算2,000万円などの限度あり) |
三大疾病一時金特約 | がん、心疾患、脳血管疾患と診断されたら100万円など |
入院一時金特約 | 病気やケガなどによる入院をしたら10万円など |
女性疾病特約 | 女性特有の疾病による入院1日につき5,000円や、乳房再建手術を含む手術1回につき10万円など※2 |
三大疾病支払日数限度無制限特約 | がん、心疾患、脳血管疾患による入院は、給付金の支払日数が無制限になる |
特定疾病保険料払込免除特約 | 特定疾病(一般的には三大疾病)により所定の状態になると、以後の保険料の払込が免除される |
※1:ほかに「入院給付日額の10倍」というように給付金額を算出する場合もある
※2:主契約の入院給付金・手術給付金に上乗せして給付される
一般的に医療保険では、「入院給付金」と「手術給付金」の2つの保障が受けられます。このほかの保障が必要な場合は、特約で付けることになります。中でも、最近多くなってきた通院治療に備える「通院特約」と、高額な先進医療が必要になった場合に備える「先進医療特約」は、検討されることの多い特約です。
がん保険と医療保険は併用できるのか
がん保険と医療保険は併用が可能です。実際に、両方の保険に加入しているケースも多くあります。
- 医療保険、がん保険の世帯加入率
- 医療保険(医療特約含む)・・・93.6% ※世帯主単体では88.7%
- がん保険(がん特約含む)・・・66.7% ※世帯主単体では60.1%
※出典(公財)生命保険文化センター「生命保険に関する 全国実態調査」より
医療保険は、約9割の世帯が加入しているベースとなる保険です。その上で、がんへの保障を手厚くしたい場合に、がん保険を活用するのが一般的です。
また万が一がんになった場合には、医療保険とがん保険、両方の保障が受けられます。
がん保険と医療保険を併用するメリットは?
- がん保険と医療保険を併用するメリット
- 幅広い傷病をカバーしながら、がん保障も手厚くできる
- 保険の見直しがしやすい
幅広い傷病をカバーしながら、がん保障も手厚くできる
がんは、治療が長期化しやすい病気です。治療中の収入の減少や、治療費以外にかかる生活費などへの備えも必要になります。がん保険と医療保険を併用することで、幅広い傷病への保障と、がんへの手厚い保障が受けられます。
保険の見直しがしやすい
ライフステージの変化や、新しい治療法の確立、新商品の登場などにより、保険の見直しを検討するケースは少なくありません。がん保険と医療保険をそれぞれ単体で加入しておくことで、それぞれの見直しがしやすくなります。
がん保険と医療保険を併用するデメリットは?
- がん保険と医療保険を併用するデメリット
- 保険料の負担が大きくなる
- 保障内容が重複する場合がある
- 手続きが煩雑になる
保険料の負担が大きくなる
2つの保険を併用すると、それぞれに保険料がかかります。保障を大きくするほど保険料も高くなるため、必要な保障を見極めて無理のない負担額にすることが大切です。
保障内容が重複する場合がある
医療保険でもがんの保障が受けられるため、保障内容が重複する場合があります。余計な保険料を払うことのないよう、それぞれの保障内容を把握し、重複がないか確認しましょう。
手続きが煩雑になる
加入する保険が複数になると、1つの場合と比べて手続きや管理が煩雑になります。手続きの負担を小さくするため、保険会社を1社に絞って加入する方法もおすすめです。もし複数の保険に加入する場合、最近ではスマホ上で使える「保険管理アプリ」もあるため活用すると便利です。
まとめ:がん保険の必要性が高いのはこんな人
医療保険に入っていれば、がん保険は必要ないと考える人もいます。実際に、公的医療保険や高額療養費制度によって自己負担額が軽減され、貯蓄や医療保険のみで医療費をまかなえるケースもあるためです。
一方で、がん治療は長期化すると数年に及ぶケースもあります。経済的負担が大きくなるだけでなく、再発・転移のリスクもあるため、がん保険の手厚い保障を検討することは決して無駄にはなりません。加入を検討する際は、万が一がんになってしまった際、治療費にあてる資金が十分に貯えてあるかが重要な判断基準になります。
具体的な例をまとめると、がん保険の必要性が高いのはこのような人になります。
- がん保険の必要性が高い人
- 貯蓄が少ない人
- 住宅資金や教育資金などで貯蓄を切り崩したくない人
- 住宅ローンや教育費などの支払がある人
- 自営業、個人事業主、フリーランスの人
- 先進医療を治療の選択肢に入れたい人
がんになった場合の治療費や生活費などに不安を感じる人は、がん保険の加入を検討しましょう。
大学卒業後、大手損害保険会社勤務を経て独立。保険会社時代は代理店営業、新入総合職員の研修担当に従事する。独立後は、FPとして生命保険をはじめとした保障の見直しや、中小企業経営者への事業承継・相続対策などの提案業務を行う。地方ローカル局にて、お金にまつわる話題を取り扱うラジオ番組「おしえて野口さん!」を23年継続放送中。
大学卒業後、大手地方銀行に就職。融資業務に加え、投資信託・保険商品等の資産管理業務を担当。退職後はライターとして独立。複数の大手WEBメディアにて執筆実績あり。