就業不能保険とは
働けない状態になったときのリスクに備える保険
就業不能保険とは、病気やケガで働けない状態になったときのリスクに備えるための保険です。
長期間働けなくなり、収入が減少したら、医療保険の給付金だけでは足りなくなるおそれがあります。
医療保険は、病気やケガの治療費などはカバーできますが、日々の生活費などをカバーすることができません。
就業不能保険では、医療保険ではカバーできない働けなくなったときの日々の生活費をカバーすることが可能です。
毎月お給料のように受け取り、収入の減少をカバー
就業不能保険の特徴は、病気やケガで長期間働けなくなった場合に、契約時に決めた給付金額をお給料のように毎月受け取れることです。
給付金は就業不能状態から回復するまで、もしくは保険金額満了まで毎月支払われます。
就業不能保険のメリット・デメリット
就業不能保険のメリットとデメリットとして、下記の点があげられます。
▶ メリット
・公的保障や医療保険では補えない生活費の不足分をカバーできる
・就業不能状態になる場合の不安を払拭できる
▶ デメリット
・保険金を受け取る条件が商品によって大きく異なる
・免責期間が設定されている場合、働けなくなってもすぐに保険金をもらえない
就業不能保険のメリット
■公的保障や医療保険では補えない生活費の不足分をカバーできる
公的保障としては、傷病手当金があります。会社員や公務員であれば、通算1年6ヶ月の間、傷病手当金として受け取ることができます。
しかし、傷病手当金として受け取れる金額は、概ね給与の3分の2程度であり、全額をカバーすることはできません。
また、病気やケガをした場合の保険として、医療保険があります。
しかし、医療保険では病気やケガの治療費などはカバーできますが、日々の生活費などをカバーすることができません。
■就業不能状態になる場合の不安を払拭できる
就業不能保険に入っていれば、働けなくなった場合でも、働いている場合と同じだけお金が入ってきます。
それにより、働けなくなった場合の経済的不安を解消できるのが就業不能保険の強みです。
就業不能保険のデメリット
■保険金を受け取る条件が商品によって大きく異なる
例えば、ある保険会社では、就業不能状態の定義を「病気やケガの治療の目的として、日本国内の病院または診療所に入院している状態」や「医師の指示にもとづき、日本国内の自宅等で在宅療養をしている状態」などとしています。
また、うつ病をはじめとする精神疾患を保障の対象にするかどうかは保険会社によって異なります。
就業不能保険の加入を検討する際は、どのような場合で保険金を受け取れるか、支払い条件をきちんと確認するようにしましょう。
■免責期間が設定されている場合、働けなくなってもすぐに保険金をもらえない
多くの就業不能保険では、給付金の支払対象外となる免責期間が60日または180日で設定されています。
免責期間が設定されている場合、働けなくなってから60日または180日を過ぎてからでないと保険金を受け取ることができません。
支払条件は厳しい?うつでももらえる?保障の範囲について
<結論>
✔病気やケガ以外で働けない場合は対象外
✔うつでももらえる保険商品もある
✔60日などの免責期間を超えないと給付金はもらえない
就業不能保険の支払条件は、「病気やケガで所定の就業不能状態になり、その状態が免責期間を超えて継続していること」です。
ポイントは以下の3つです。
・病気やケガによること
・所定の就業不能状態であること
・免責期間を超えて継続していること
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
病気やケガによること
基本的に入院や医師の指導の下に在宅療養をしている場合が所定の就業不能状態に該当しますが、保険会社によって違いがあります。
特に注意が必要な部分は、「うつ病などの精神疾患が含まれるか」どうかです。
うつ病などの精神疾患が保障対象に含まれる場合と含まれない場合がありますので、それぞれの商品をよく確認しましょう。
免責期間を超えて継続していること
多くの就業不能保険では、給付金の支払対象外となる免責期間が60日または180日で設定されています。
給付金が支払われるには60日などの免責期間を超えて所定の就業不能状態である必要があるため、ちょっとした入院では給付金を受け取れません。
これが就業不能保険の支払条件が厳しいと言われることがある理由の一つです。
就業不能保険はいらない?就業不能保険の必要性
<結論>
✔「自営業やフリーランスの方」や「貯蓄が十分にない方」は就業不能保険を検討しましょう。
60日の免責期間が設定されているなど、支払条件が厳しいとも言われる就業不能保険ですが、
万が一に備えて、以下の方は就業不能保険に入ることを検討することをおすすめします。
・自営業やフリーランスの方
・貯蓄が十分にない方
以下で詳しく説明します。
自営業やフリーランスの方
病気やケガで就業不能状態になったとき、会社員や公務員であれば、健康保険から傷病手当金が支給されます。
しかし、自営業やフリーランスの方が加入する国民健康保険には傷病手当金の制度がありません。
また、病気やケガで障害状態になった際には、会社員や公務員は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」を受給できるのに対して、自営業やフリーランスの方は「障害基礎年金」のみの受給です。
病気やケガで働けなくなり収入が減少した際に、自営業やフリーランスの方は、会社員や公務員のような公的保障がないため、収入がゼロになってしまいます。こうした収入の減少や経済的な不安をカバーするために、自営業やフリーランスの方は、就業不能保険の加入をおすすめします。
貯蓄が十分にない方
働けなくなると、収入が減る上に、医療費などで支出が増加します。
会社員や公務員であっても、傷病手当金で受け取れるのは給与の全額ではなく、3分の2程度です。
医療費などで支出の増加がある中、収入が減少して生活費や教育費、ローンなどを支払い続ける貯蓄がないのであれば、就業不能保険の加入を検討することをおすすめします。
加入条件は?みんなどのくらい入っている?
<結論>
✔保険会社ごとに加入条件は異なる。職業や年収、健康状態によって加入が制限される可能性がある
✔就業不能保険の加入率は全体で18.4%、30〜34歳では34.6%
保険会社ごとに加入条件は異なる。職業や年収、健康状態によって加入が制限される可能性がある
職業や年収、健康状態によっては、契約の引き受けが制限される可能性があります。
職業については、例えば、自衛官や警察官、消防官などはケガや病気をするリスクが高いとされています。
年収については、年収が低いもしくは定期的収入がない方は、加入が制限される傾向があります。
健康状態については、既往症(過去の病気)や健康状態についての告知が必要であり、告知の内容によっては、
加入が制限される場合があります。
就業不能保険の加入条件は、保険会社によって異なるため、ある保険会社では加入ができなかった場合でも他の保険会社では加入ができる場合があります。
就業不能保険に加入できるか心配な方は、複数商品の選択肢をもっておくとよいでしょう。
就業不能保険の加入率は全体で18.4%、30〜34歳では34.6%
生命保険文化センターの2021年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、就業不能保険の世帯加入率は18.4%となっています。
世帯別では、下記の通りとなっており、30〜34歳が最も高い34.6%となっています。
世帯主年齢 | 世帯加入率 |
---|---|
29歳以下 | 26.5% |
30〜34歳 | 34.6% |
35〜39歳 | 30.9% |
40〜44歳 | 26.3% |
45〜49歳 | 28.7% |
50〜54歳 | 26.3% |
55〜59歳 | 17.5% |
60〜64歳 | 14.7% |
65〜69歳 | 9.4% |
70〜74歳 | 5.1% |
75〜79歳 | 4.8% |
80〜84歳 | 3.7% |
85〜89歳 | 4.8% |
90歳以上 | 8.3% |
就業不能保険の選び方
就業不能保険を選ぶ際は、以下の4点を確認するようにしましょう。
・給付金額
・保険期間
・給付金の支払期間
・保険会社が定める就業不能状態
給付金額
就業不能保険の給付金額は、月額5万円もしくは10万円から1万円単位などで設定できます。
では、給付金額はどのように設定するのがよいのでしょうか。
給付金額は、自分自身が就業不能状態になった際に、必要な金額を設定します。
具体的には、「毎月かかる生活費」から「公的保障でカバーされる金額」を差し引いた金額とするのが一つの考え方です。
「公的保障でカバーされる金額」とは、例えば会社員や公務員が受け取る傷病手当金などが該当します。
保険期間
多くの就業不能保険は、55歳〜80歳などの間で5年刻みで保険期間を選択できます。
決め方としては、「末の子供が独立するまで」や「定年退職する時期まで」などの考え方があります。
保険期間が長くなると、その分保険料も高くなるので、必要な期間だけ保険期間として設定するようにしましょう。
給付金の支払期間
給付金の支払いは、保険商品によって、5年・10年などの期間を限定するものと、保険期間内であれば支払いが続くものに分かれます。
期間を限定するものの場合、必要な保障が得られるかどうかをきちんと確認することが必要です。
保険会社が定める就業不能状態
保険会社ごとに就業不能状態の定義が異なるので、きちんと確認することが大切です。
確認するポイントとしては、「精神疾患が含まれるか」、「むち打ち症や腰痛が含まれるか」などです。
精神疾患が含まれないケースがあるのは、いつ精神疾患になったのか、回復したのはいつかなど、見た目での判断が難しいためです。
また、むち打ち症や腰痛が含まれないケースがあるのは、医学的な裏付けが難しいためと言われています。
就業不能状態になった際に、思いがけず保険がおりなかった、ということがないように、しっかりと保険会社が定める就業不能状態の定義を確認しましょう。